第三章 - 1/7

七月二十三日……
 電話の鳴る音で翼は目を覚ました。髪の毛ボサボサ、寝ぼけ気味で電話に出る。
「ふぁい……山下ですけど……」
『もしもし、山下くんのお宅ですか? 神宮です』
 声の主は神宮だった。少しうれしそうな声で話している。
「あ、神宮さんすか。おはようございます。で、なんですか? こんな朝っぱらから」
『実は、雨崎くんの意識が戻ったんだ。それで、君に連絡したんだけど』
「……えっ!? それマジっすか?」
『うん。まじマジ』
「じゃあ、話聞きに行ってもいいですか?」
『うん、僕らもこれから事情聴取しにいくから、そのあとに時間つくってもらうよ』
「あざーーす!! じゃあ、友達と一緒に行きますんで」
『ん?? なんでお友だちもなの?』
「事件のこと話しちゃいました」
『あまり無関係な人を会わせるのは……ちょっと……』
「俺一人じゃ心細いんですよね。というわけで友達も連れてくんでよろしくお願いします」
 翼は一方的にそう言って電話を切った。そして急いで支度を始めた。
 バタバタと着替え、身支度を調えたところで友人たちに電話を掛ける。
 匠はバイトだったが、みちる、よしみは大丈夫そうだ。
 電話を終えて一息ついていると透が起きてきた。
「……あれ……翼くん……、出掛けるの……?」
「透さん、おはようございます」
「うん……おふぁよう……」
 いつもより睡眠時間の足りなそうな顔でソファに座る。
「さっき、雨崎修也の意識が戻ったって連絡があったんです。今から行こうと思ってるんですけど、透さんはどうします?」
「えっ!?」
 その話を聞いた途端になぜか透は驚いた。
「透さん?」
「……あっ、ごめん。僕はいつも通りここでおとなしくしてるよ」
「そうですか、わかりました。じゃあ、行ってくるんで、朝ごはんは冷蔵庫の中のものを適当に食べてください」
「うん、ありがとう」
 翼は少しだけ透の様子に違和感を覚えたが、そのまま家を出た。

 翼が出かけて少し経った頃、透も行動を起こした。誰にも気づかれないように家を出る。自分のいた痕跡をすべて消して……。

「あっ山下くん、おはよう」
 病院の待合室フロアまで行くと神宮と秋山が待っていてくれた。
「おはようございます」
 だが、秋山はみちるの顔を見るなり驚きの声をあげる。
「えっ!? みちるっ!?」
「ん? 秋山さん、山下くんとお友だちと知り合いですか?」
「あれっ、お父さん。どうしたの? こんなところで」
 神宮の質問はみちるの言葉であっさり解決した。
「みちる……山下くんと友達だったのか?」
「うん、お父さんこの前翼くんの電話出たじゃない」
「え? あっ……」
 秋山は思い出したらしい。確かに翼がみちるの家に電話を掛けたとき、出たのは父親だった。そしてその時神宮は翼の家に訪ねてきたが、秋山は居なかった。
「……とりあえず、話聞きに来たんでしょ。おじさんもほらっ、早く!」
「よしみちゃんまでいるのか……」
 何はともあれ、五人は雨崎の病室に向かった。