「うーん……頭がふらふらだ……。あれ? 君たち、なんで騒いでるの?」
むくりと起き上がり、頭を押さえていたかと思ったら、急に四人を見た。
「えっ! あっ、あのすいません。起こしちゃいましたか?」
「ん? ……あ、いやいや寝てた訳じゃないから大丈夫」
「よかった。あ、俺、山下翼っていいます。あなたの名前は?」
「僕は……とおる。西屋透だよ」
男は透と名乗った。
「透さん! ひとつ質問いいですかっ?」
「うん。いいよ」
「あっ、私はみちるです! ……じゃなくて、透さんはなにか重要なものを持ってて、悪人からそれを守ってるんですか???」
「へっ……?」
「あ、ちょっとみちる! いきなりなに聞いてんのよっ!?」
みちるの突拍子もない質問に透の表情は最大限のきょとん顔になった。よしみに思い切り突っ込まれ、みちるの勢いは若干少なくなる。
「私の推測なんだけど、透さんは悪い人に追われてるんじゃないかと思ってるんです」
「うん。大正解。追われてるよ」
『うそンっ!?』
みちる以外の三人は同時に固まった。
「なんで追われることになっちゃったんですか?」
「そこまで教えられないよ。みんなを巻き込むことになっちゃうでしょ?」
「小脇に抱えた鞄はどうした。もう持ってないだろ?」
匠は硬直から復活して、透に言った。透は驚いて匠を見る。
「な、なんでそれの存在を……?」
「お前にバイクを取られたとき、持ってるのを見たんだ。……たぶんあの中に秋山の言う『重要なもの』が入ってるんだろ」
二人の間に緊張した空気が流れる。
「……失敗したなぁ、ちょっと匿ってもらってほとぼりが冷めたら全部処分しようと思ってたのに……」
透は困ったように頭を掻く。
「……強すぎる好奇心は危険とも隣り合わせだ。……あと、僕が匿ってもらおうと思ったのが君たちだったって言うのもこの結果に繋がってきてるのか……」
透は自嘲ぎみに呟いて、顔を上げた。
「……まず始めに謝っておく。もしかしたら君たちを危険なことに巻き込んでしまうかもしれない。なるべくそうはならないよう努力はするけど……覚悟はしておいて欲しい」
四人は頷く。
「僕はある組織のスパイをしていて、その組織が作ったコンピュータウィルスの入ったディスクを盗んだんだ」
「そのディスクが『重要なもの』なんだろ? 今持ってないってことはもうここにはないってことか?」
「うん、隠してきたよ。もちろん、どこに隠したかは内緒だ」
透は人差し指を立てて、唇にそっと当てた。
「あっ、ねえねえ! 私たちで透さんのこと守ってあげようよ! 今夏休みだし!」
みちるが突拍子もないことを言い出した。今まで黙って固まっていた翼は更に驚く。
「はあっ!? お前……何言ってるんだよ!? 透さんスパイだぞ? 俺たちなんかよりずっと強いに決まってるだろ!?」
「そうだよみちるちゃん、巻き込んでしまうかもとは言ったけど……わざわざ自分から巻き込まれに来なくても……」
「でも! 透さん怪我してるじゃないですか! それに翼くんに匿ってもらってる時点で翼くんは巻き込まれちゃってるもん! 私も巻き込まれる!!」
みちるの仲間はずれは嫌だ思考に若干の呆れを含みながら、よしみが口を挟む。
「あんたなんで自分から面倒に関わろうとするのよ……。まあ、今の透の状況じゃ、逃げてもすぐ捕まりそうって思う気持ちはわからなくもないけどね」
「それに、お前がこけたバイク! あれは俺のだ! 俺だって巻き込まれてる。お前に巻き込んだ自覚がなくてもな」
よしみに続いて口を挟んだ匠の言葉に反論の余地はほとんど見つからない。
透はうつむいた。
「で、でも……君たちを危険な目に合わせる訳にはいかないんだ……! 実は……関係者が一人行方不明で……まだ見つかってないんだ。……僕が盗んだウィルスを作成した人物が……」
「行方不明? あれ……確か今朝ニュースで……」
匠にはなにか引っ掛かるものがあったらしい。顎に手を当てて考えはじめた。
「とにかく!! 私たちが透さんのこと、守ってあげる!!!」
みちるの結論は一貫して変わることはなかった。一度決めてしまうともう誰にも止められないらしい。
「こうなったらしょうがない! いいわ、みちる。私も協力してあげる」
「えっ、そんな……! 下手したら殺される可能性だってあるんだよ!?」
透があわあわしているうちに匠がついになにかを思い出したらしく、ぽん、と手を叩いた。
