秋人の家は喫茶店をやっている。駅からほどよく近いので学校帰りの高校生で賑わっていた。
「あきとぉ、今日のメニューはー?」
「今日は秋期限定メニューだよ。その名もスイートマロンパフェ!」
メニュー名と共に現物を披露する秋人。
「へー、栗とさつまいもなー」
翼は早速パフェを食べる。
「うめえー!スイートポテトうめー!」
「実はさ、このパフェの原案考えてくれたの隣のクラスの子なんだ。最近よく来てくれて」
「へー」
翼のスプーンは止まらない。
「翼、いつからあの子達と友達だったの?」
「ん???」
そこでやっとスプーンが止まった。
「隣のクラスの??誰?」
「えっとね、秋山さんと河野さん」
「あっ、その二人か!夏休み入ってすぐくらいかな、色々あって仲良くなったんだ」
翼はパフェを最後まできれいに食べ終えると席を立った。
「秋人、調理場ちょっと貸してくれよ」
「なにか作るの?ちょっと待ってて。父さんに聞いてくる」
秋人の父親から許可をもらうと、翼は調理場でなにか作り始めた。
透はマンションの駐輪場にバイクを停めた。
(翼くん、まだ帰ってきてないかな……。ていうか、妹さんかな……一人で大丈夫だろうか……)
翼の家のインターホンを押す。すぐに女の子の声が聞こえてきた。
『はーい!誰ですかー?』
「西屋です。翼くんは帰ってきましたか?」
『……あっ、でんわのお兄さんだ!まだかえってきてないよ!』
「うーん、そっか。じゃあ、ここで待たせてもらってもいいですか?」
『お外あつくない?入りなよ!あっ、でもおかあさんがしらない人おうちに入れちゃダメっていってた』
お母さんの言うことを聞くいい子だ……透は少し安心した。
『でも今おかあさんいないから入っていいよ。でもナイショね』
女の子はインターホンを切るとすぐに玄関のドアを開けた。前言撤回。とても不安だ。
小学校低学年くらいの女の子が一人で留守番している。こんな悩ましい状況の時に訪問してしまって、透は少し後悔していた。
「お兄さん入りなよ!どうぞごゆっくり!」
「えっ!?あの!ちょっと!!」
女の子は透の手をつかむ。透はあわてて靴を脱いで、家に上がった。
「お兄さんはお兄ちゃんのおともだち?お兄ちゃん今日はとうこう日なんだ」
「そうだったんだね。ごめんね、お兄さんがいないときに来ちゃって」
「お兄ちゃんがわるいんだよ。とうこう日おひるまでなのにかえってこないのはあそびいっちゃったからだもん!」
女の子はぷんぷん怒っている。透は話題を変えるべく、別の話を振った。
「そういえば、前に僕がここに来たときはいなかったね?」
「うん、まことね、おとうさんとおかあさんのところ行ってたんだ。お兄ちゃんはがっこうおわらないからって行かなかったの」
「お父さんとお母さんとは一緒に住んでないの?」
そういえば、翼は実質一人暮らしだと言っていた気がする。
「うん、アメリカでおしごとしてるの。おじいちゃんとおばあちゃんはイギリスにいるよ」
想像以上にワールドワイドだった。透は内心驚く。
「お兄さんは『とおる』ってお名前だよね!まことはまことだよ」
名乗っていなかったのを思い出したのか、真はさらっと自己紹介をした。
「じゃあ、まことちゃんは一人でアメリカまで行って、帰ってきたんだ。すごいね」
透が真の頭を撫でると、照れくさそうに笑った。
「あ、そうだ!おもてなししてない!お茶もってくる!」
唐突に真はキッチンへ走っていく。ほどなくして、お茶が半分くらい入ったポットを重そうに持ってきた。
「あー、危ない危ない」
透がポットを受けとると、真は次の行動に移る。
「お兄さんありがとう!コップもってくる!」
棚からグラスを2つ出し、テーブルに置いた。
「まことが入れてあげる!」
あのポットの運び方からしてちょっと無理がある。透はやんわりと止めた。
「ありがとう、でも大丈夫だよ。僕が入れるから」
透が2つのグラスにお茶を注いでいると、玄関のチャイムが鳴った。
「翼くん、帰ってきたかな?」
「お兄ちゃんだったらかぎあけて入ってくるよ!まこと見てくる!」
真はダッシュで玄関に向かった。
